機関投資家による「ドル買い」
ドル円は90円付近での機関投資家による「ドル買い」と91円付近での戻り売りによる「ドル売り」に挟まれて、約1円ほどの狭いレンジの中を高下した。
温家宝中国首相は人民元切り上げ論に反対する見解を示したものの、一方で米国議会は中国を為替操作国として認定すべき、との意見から米中両国のそれぞれの思惑に翻弄されるような展開となった。格付け会社からは、トリプルAを保持している米英独仏に対して、財政赤字拡大を材料に今後の格下げを示唆する動きもあり、さらにギリシャ問題を始めEU主要国の財政問題になかなか決着の糸口が見えない状況から、ユーロは引き続き軟調な展開を辿ることとなった。
全般的に3月末を前にポジションの偏りを解消させるような動きが中心となったことから、明確な方向性を持った流れというよりは、各経済指標や要人の発言によって振らされるような展開が多くみられた一週間となった。
これからの相場展望
今週は期末に向けた株高・円安の調整を見極めつつ、リスク回避の動きによって軽くなったマーケットが円安へ方向転換するタイミングを計るような展開を予想する。ギリシャに関しては、IMF若しくはEUによる救済策が決定することが見込まれているものの、それに続くスペイン、ポルトガル等他主要国への問題解決に向けた動きが鈍いことで、まだ信用不安を払拭するまでには至っていない。
さらに何度も先送りしていたギリシャ問題についても25-26日のEU首脳会議にて決着がつかなければユーロ売りが再度加速するリスクを秘めている。
一方米国では25日にバーナンキFRB議長が公聴会で「出口戦略」について見解を示すことになっている。公定歩合引き上げから出口戦略に向けた動きが強まると、一旦マーケットを沈静化させるために低金利政策の維持する姿勢を強く示しているだけに、当局の意向を見極めようと市場の注目度は高い。また米国議会では改めて中国人民元切り上げに対する圧力が高まってきており、中国指導者によるとまだ時期尚早との見方もできるが、米中の動きによって振らされる場面が今後も多く出てくるだろう。
さて、3月末の日本企業によるレパトリはほぼ終了しているとの見方から、円高に作用していたひとつの実需要因が剥落したため、今後は期末に向けた日銀による資金供給が徐々に効果を発揮してくるのではないか、との観測も出てきた。昨年末の円安を演出した資金供給はボディブローのようにじわじわと影響範囲を広げてくるため、押しの場面では円高を止める大きな役割を果たす可能性もあるだろう。
注目すべき通貨ペア
先週のユーロドルは 1.3816付近から1.3500付近まで大きく下落し、前週に見られた戻り高値を試す展開から、上値確認後に再度下値を試す動きへと変化した。テクニカルで見ると一目均衡表週足の雲下限1.3583を割り込み、今週も下値を試しやすい展開が見込まれている。先月来の安値1.34台前半を割り込んでしまうと、さらに一段下のステージに移行するリスクを秘めており、今後の展開を占う上では非常に重要な一週間となる。
昨年12月以降、9週の移動平均線が上値をキャップしているため、地合いとしては戻り売り姿勢で参入し、1.34台後半から半ばにかけて買い戻す動きが主流になると思われる。1.34台は前月より何度も試して跳ね返された水準となるため、一方的なユーロ売りには繋がらないことも考慮しておく必要があるだろう。
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